【2026-04-22】暦年贈与と精算課税、どちらが得?2026年の答え

「子どもや孫に少しずつお金を渡しておきたい。でも、税金のことを考えると何が正解なのか分からない……」——親世代からこんな相談を受けることが増えました。実は2024年の税制改正で、生前贈与のルールが大きく変わっています。暦年贈与と相続時精算課税、どちらを選ぶかで数百万円の差が出ることも。正しく理解すれば、あわてる必要はありません。

暦年贈与と相続時精算課税、そもそも何が違うのか

2つの制度の基本と、2024年改正で変わったポイント

生前贈与(生きているうちに財産を渡すこと)には、大きく分けて2つの課税方法があります。1つは「暦年贈与(れきねんぞうよ)」。1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額から年110万円を差し引いて、残りに贈与税がかかる仕組みです。もう1つは「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」。60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選べる制度で、累計2,500万円までは贈与税がかからず、相続が発生したときにまとめて相続税で精算する仕組みです。

2024年1月1日から、この2つの制度がどちらも大きく変わりました。暦年贈与については、相続が発生したときに「過去の贈与を相続財産に加算する期間」が3年から7年へと延長されました。相続時精算課税については、これまで基礎控除がなかったのに、新たに年110万円の基礎控除が設けられました。どちらも家計に大きく影響する改正です。

「どちらがお得か」を単純比較してはいけない理由

ご相談を受けていてよくあるのが、「暦年贈与と精算課税、どっちが節税になりますか?」というストレートな質問です。しかし、この問いには簡単には答えられません。なぜなら、どちらが有利かは「いつ、誰に、いくら、何年間渡せるか」という条件で大きく変わるからです。具体的には、贈与する方の年齢・健康状態、渡す相手(子か孫か)、贈与したい総額、相続税がそもそもかかる規模かどうか、この4つで最適解が変わります。商品を売るためではなく、ゴールから逆算して考える。この姿勢がとても大切です。

また、そもそも相続税がかからない家庭も多くあります。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」ですから、配偶者と子2人なら4,800万円、子3人なら5,400万円までは相続税がかかりません。不動産(自宅)がある場合でも、配偶者が相続すれば「配偶者の税額軽減」で1億6,000万円または法定相続分までは非課税。そのため、まず「そもそも相続税がかかるのか」を確認することが、贈与制度を選ぶ前の最初のステップになります。不要な節税対策に時間とお金を使ってしまうのは、意外にもよくある失敗パターンです。

2026年時点で押さえておきたい「7年加算ルール」の現在地

加算期間は段階的に3年→7年へ延びていく

暦年贈与の大きな変更点である「生前贈与加算」について、2026年4月現在の正確なスケジュールを整理しておきます。相続開始日(亡くなった日)が2026年12月31日以前であれば、加算対象は従来どおり「相続開始前3年以内」の贈与のみです。2027年1月以降に相続が発生する場合、加算対象が段階的に延びはじめ、最終的に2031年1月以降の相続からは「相続開始前7年以内」の贈与すべてが加算対象になります。

ここで誤解されやすいのは、「2024年からいきなり7年になったわけではない」という点です。加算期間が延びるのは段階的で、2026年までの相続はまだ影響を受けません。ただし、2024年1月1日以降の贈与は将来的に加算対象になり得るので、今から計画的に動き始めることが重要になります。なお、延長された4年分(相続開始前3年超〜7年以内)については、合計100万円までは加算しない経過措置も設けられています。

よくある誤解——「駆け込み贈与」が逆効果になるケース

「だったら今のうちに一気に贈与してしまおう」と考える方が少なくありません。しかし、ここに落とし穴があります。贈与者が80代以上で、相続が近いうちに発生する可能性がある場合、暦年贈与で子どもに渡したお金は結局、生前贈与加算のルールで相続財産に戻されてしまいます。つまり、贈与税を払った上に相続税もかかる、という二重の負担になりかねません。また、孫への贈与は原則として加算対象外ですが、孫が遺言で財産を受ける場合や代襲相続人になる場合は加算対象になります。「早く渡せば得」という単純な話ではないのです。

ゴール起点で考える、2つの制度の使い分け

「何のために渡すのか」を先に決める

お金は「手段」であり「目的」ではありません。贈与や相続の相談を受けるとき、FPとしてまず伺うのは「何のために・いつ・いくら渡したいのか」という3つの問いです。教育資金のため、住宅購入のため、将来の相続税対策のため——目的によって最適な方法はまったく違います。たとえば、子どもの住宅資金を今すぐ援助したいなら住宅取得等資金の非課税特例が使えるかもしれませんし、将来に備えて長期的に財産を移したいなら暦年贈与を10年・20年かけて使っていく戦略が有効です。資産は「すぐ使うお金」「じっくり育てるお金」「遺したいお金」の3つに整理して考えると、どの財源から・どの制度で・誰に渡すかが見えてきます。

暦年贈与が向くケース・精算課税が向くケース

整理すると、暦年贈与が向くのは「贈与者がまだ若く健康で、長期的にコツコツ渡していける」ケース。相続開始まで10年以上ありそうな方なら、7年加算の影響も限定的で、年110万円の基礎控除を毎年活用できます。一方、相続時精算課税が向くのは、大きな金額(例:2,500万円以内)をまとめて渡したい場合、値上がりが見込まれる財産(株式や不動産など)を早めに渡したい場合、または贈与者の年齢が高く、暦年贈与では加算の影響が大きくなる場合です。2024年改正で精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されたため、この110万円は相続財産に加算されません。つまり「コツコツ贈与したいけれど、加算の心配を避けたい」というニーズにも応えやすくなりました。

さらに見落とされがちなのは、「贈与税の税率」そのものの違いです。直系尊属(祖父母・父母)から18歳以上の子・孫に贈与する場合は特例税率という軽減された税率が使え、たとえば500万円を一度に贈与しても、基礎控除後390万円に対して贈与税はおよそ48.5万円。実効負担はおおむね1割程度にとどまります。「まとまった金額を一度に渡したほうがシンプルで安心」という家庭では、暦年課税の特例税率で一気に渡す選択肢もあります。制度を組み合わせて設計する、という発想が大切です。

ケース別シミュレーション——あなたならどう選ぶ

ケース①:65歳・資産8,000万円・子が2人いる場合

65歳のAさん、ご夫婦で資産8,000万円、お子さんは2人。相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、配偶者と子2人なら4,800万円ですから、このままだと相続税がかかる可能性が高い水準です。Aさんの場合、健康で相続までまだ時間がありそうなら、暦年贈与で年110万円を2人の子に10年間渡すだけで、合計2,200万円を相続財産から移せます。仮に法定相続分で取得した金額が5,000万円以下の部分にかかる税率20%を想定すると、相続税の軽減効果は単純計算で数百万円規模になる可能性があります(※実際の計算は配偶者控除や各種特例により変動)。

ポイントは「現金を一気に動かさず、毎年の振込記録を残す」こと。通帳に履歴を残し、できれば簡単な贈与契約書を交わしておくと、後々の税務調査でも説明がつきやすくなります。毎年同額を機械的に振り込むと「定期贈与」とみなされて不利に扱われることがあるため、金額や時期を柔軟に変えるのも実務上のコツです。

ケース②:78歳・資産1億2,000万円・事業用不動産を持つ場合

78歳のBさんは、今後値上がりが見込まれる収益不動産をお持ちです。この場合は、相続時精算課税を使って早めに不動産そのものを子に贈与する選択肢が有力です。精算課税で贈与した財産は、相続時に「贈与した時点の価額」で精算されるため、将来値上がりした分は相続税の対象になりません。ただし、一度精算課税を選ぶと、その贈与者との間では暦年贈与に戻れないというルールがあるので、慎重な判断が必要です。また、不動産を贈与すると登記費用や不動産取得税もかかります。数字だけでなく、手続きコストも含めて全体像で判断することが大切です。

ケース③:55歳・孫に教育資金を残したい場合

55歳のCさんご夫婦は、孫の教育資金を少しずつ援助したいと考えています。孫への贈与は原則として生前贈与加算の対象外のため、暦年贈与の110万円枠を孫1人につき毎年活用するのが基本形です。さらに、教育資金の一括贈与の非課税特例(直系尊属から30歳未満の子・孫へ、最大1,500万円まで、学校以外の習い事等は500万円まで)も選択肢になります。ただし、この特例は適用期限が定められており、使うタイミングと手続き(金融機関への専用口座開設、領収書の提出など)を事前に確認しておく必要があります。「まとめて一括で渡したい」のか、「毎年少しずつ渡したい」のか、目的に応じた制度選択が大切です。

専門家に相談するタイミングと見極め方

贈与や相続は、一度決めると後戻りが難しい決断が多くあります。特に相続時精算課税は、一度選択するとその贈与者からの贈与はすべて精算課税になり、暦年贈与の110万円枠に戻ることはできません。こうした判断は、税理士やFP(ファイナンシャルプランナー)といった専門家に相談してから決めるのが賢明です。良いアドバイザーの見分け方は、「特定の金融商品や節税スキームを最初に勧めてこない」「報酬体系が明確」「家族のゴールを先に聞いてくれる」の3点。商品を売るための提案ではなく、人生のゴールから逆算した提案をしてくれる人を選びましょう。

まとめ:整理して動けば、贈与は怖くない

最後に要点を3つに整理します。①2026年中に相続が発生する場合、暦年贈与の加算期間はまだ3年。2027年以降に段階的に7年へ延長されていく。②暦年贈与と相続時精算課税は「どちらが得か」ではなく、贈与者の年齢・目的・金額・財産の性質で使い分ける。③2024年改正で精算課税にも年110万円の基礎控除が新設され、使いやすくなった一方、一度選ぶと戻れない点には注意が必要。まず今日やることは1つだけ。家族構成と財産のおおよその総額を紙に書き出し、「誰に、いつ、いくら、何のために」渡したいかを言葉にしてみてください。そこが、すべてのお金の計画のスタート地点です。

💬「お金のことは、商品を買う前にゴールを整理することが大切です。まず、自分がどう生きたいか・家族にどうあってほしいかを書き出すことから始めましょう。」

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※本記事の情報は2026年4月時点のものです。税制・制度は変更される場合があります。個別の判断については、税理士・FPなど専門家へのご相談をおすすめします。本記事はFPとしての知見をもとに一般的な考え方を解説したもので、特定の金融商品の推奨や、断定的な収益・節税効果の保証を行うものではありません。

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